拙者放浪記 スパ昭島



〜〜〜拙者放浪記 スパ昭島




 そうして何とか、日暮れまでに目的地の【スパ昭島】に到着できました。
 いわゆる24時間営業の銭湯なんですが、半分レジャー施設としての毛色もありまして、家族連れもちらほらいました。

 貸し漫画のコーナーにはそれはもう子供達がぞろぞろと群がって、風呂上りの余韻に幸せそうに寝転がり、誰も彼も漫画の世界に漬かり込んでいました。

 客層は大まかに運送関係のおじさん。
 この手の生活に慣れ親しんでいる様子で、時が傾けばちゃっかり就寝場所を確保しています。
 大いびきをたて横たわっている姿には疲労が見て取れて、明らかに明日の朝は早く忙しそうに見えました。

 バイカーの姿も多く見受けました。
 年齢層も25〜30程度が多く、ちょっと同類の匂いがするので気楽な心地になりました。
 とはいえ、こう、ツッパリ系の方々でして、ちょっと怖かったですが。

 あとは老夫婦。こちらはそう数は多くなかったような気がします。
 あまり目立たなかっただけかもしれません。

 全体的に年齢層は低く、レディースデーもありましたが男性が矢張り大半を占めていました。


 さて、肝心要の風呂なんですが。

 いや、最高でした。
 13時間使い続けた筋肉を、温水で解して水かぶってまた温水、気まぐれにサウナに入って熱いから露天風呂に移動して、おまけに薬湯があったので入ってみて………。

 薬湯はちょっと濁ってて色々浮いてて、ちょーっとバッチイ印象でしたけど………。
 超音波風呂とかいうピリピリ肌がこそばゆいヤツにも入って、多分合計4時間以上たむろしていた予感です。

 けれどそれでも疲れが全て取れるわけでもありませんでした。
 身体の芯にどうしても抜けない疲労と、虚脱感(風呂の入り過ぎ??)がありまして、けれどそれでも明日の旅の為に何とか癒そうと努力しました。


 ようやく疲れ切って、3度目の風呂から戻ると流石に1時過ぎでした。

 けれど前々寝れません。
 背もたれ椅子は全て就寝客に占領されてますから、手頃なソファを見つけて寝転がって………けれど寝れないんです。

 身体は疲れているんですが、精神はさほど疲労を覚えているわけでもないようで、双方に食い違いがあったのかもしれません。
 仕方ないのでマンガを回し読みして―――

 またここにも寝付けない方々が物静かに同じ無為を貪っていました。
 何をするわけでもなく、ただ寝静まった空間を半分居心地悪そうに、就寝を諦めた様子です。

 眠りから目覚めてしまって、寝ぼけた様子で煙草を呆然と吸いながら、何故か肩膝立ちで本を読む人もいました。
 煙草は好きになれませんが、その姿は何か典型的、象徴的で目を引きました。


 今思うと、およそこの旅は【観察】の旅であったと感想付けられます。

 あくまで傍観者としてのポジションを厳守し、いや介入する勇気もなかったのですが………
 街並み、人々、風俗、山や道の勾配を眺め観察思慮することばかりを続けました。

 ですから、相応に当時の私は奇異なる放浪者であったと、客観視できると思います。
 多分、怖い人。怪しい人。人攫い、アウトロー、係わり合いにならない方が良い人。
 など、マイナスのイメージは拭えなかったに違いありません。

 それほど私は極端に、何故かモノを観察するのに異常に執着してしました。
 当時は物語を描こうにもどうしても形を成さず、創作のイメージ元に植えていた影響があるのでしょう。

 私には観察物から過剰に感性や情報を求める悪い癖があり、半ば偏執的に物語の糧を求めるその姿は、自粛すべき方向と反省しております。
 むしろ自然体に構え、何気ない、味気ない風景でも認めてゆく努力が必要なのかと、最近殊に思う次第です。


 さもあれ、ようやく眠気が訪れるも、浅い眠りは2時間と少し。
 早朝朝方にまた目覚めてしまい、早々に出勤してゆく運転手さんを尻目に、料金の時間ギリギリまでサウナと水風呂を行き来しました。




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